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東京地方裁判所 平成6年(ワ)22281号 判決

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求める裁判

一  原告

1  被告らは、原告に対し、連帯して金一億三五五八万五五三四円及びこれに対する平成七年一月二五日から支払済みまで年五分の割合の金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告三井建設株式会社

1  本案前の答弁

主文同旨

2  本案の答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

三  被告三井不動産株式会社

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二  事案の概要

一  原告は、区分所有の対象となる一棟の建物であるaマンション(以下「本件建物」という。)の区分所有者全員によって構成された管理組合であるが、本件は、原告が、本件建物を建築した被告三井建設株式会社(以下「被告三井建設」という。)及び本件建物の区分所有部分を販売した被告三井不動産株式会社(以下「被告三井不動産」という。)に対し、被告らの行為によって本件建物の共用部分に瑕疵が生じ、その補修に要する費用相当額の損害を受けたとして、民法七〇九条、七一九条に基づき損害賠償の請求をした事案である。

二  当事者の主張

1  原告

(一) 原告は、本件建物の区分所有者全員(四二名)を組合員として構成され、共用部分の管理を目的とする管理組合である。

(二) 本件建物の共用部分とは「共用の玄関、廊下、階段、機械室、その他の専有部分に属しない建物の部分」をいうものとされている。

(三) 被告三井建設は、本件建物について、三階建として設計し、構造計算した建物に鉄骨コンクリートの四階部分と軽量鉄骨の五階部分を漫然と乗せた建築をした。

また、被告三井不動産は、本件建物は居室の半分の上部に上の階のテラスを設置する雛壇構造になっているところ、五階部分を除く全戸にカイズカイブキを植えた重さ三〇〇キロ近くもあるプランターをテラスの広さに応じて八個から一〇個、漫然とテラスの手すり近くに置いた。

そして、右被告両名の行為が競合した結果、本件建物の外壁、バルコニー等にひび割れ等の瑕疵が生じた。

(四) 右瑕疵の修補代金相当額は、合計一億三五五八万五五三四円であり、右金額は被告らの右行為と相当因果関係のある損害である。

(五) 本件建物に生じた右瑕疵は、共用部分について生じた瑕疵であり、本件損害賠償請求は、右瑕疵の修補等を目的とするから、原告の全組合員に総有的に帰属すると解すべきであるし、本件不法行為による損害賠償請求は、共用部分の管理行為に該当するというべきであるから、原告は、区分所有法二六条四項によって、原告たりうる。

2  被告ら

(一) 被告ら

原告主張のごとく、仮に本件建物の共用部分に対する不法行為による損害賠償請求権が認められるとしても、右権利は各区分所有者に帰属するから、区分所有者がそれぞれ行使すべきものである。区分所有法二六条四項は、本来区分所有者に帰属する権利を権利者に代わって行使することまで定めたものではない。

(二) 被告三井建設

区分所有法二六条四項は、管理者が訴訟当事者となるためには、規約または集会の決議によることを必要としているが、原告の規約にはそのような定めはないし、集会の決議の存在を示す証拠もない。

(三) 被告三井不動産

原告においては、理事長が区分所有法の管理者とされているから、区分所有法二六条四項を根拠とするのであれば、理事長が原告とならねばならず、同条を根拠に原告が訴訟当事者となることはできない。

三  争点

原告は、本件損害賠償請求訴訟における当事者適格を有するか。

第三  争点に対する判断

一  まず、当事者適格を判断する前提として、原告が、法人に非ざる社団として、民事訴訟法四六条による当事者能力を有するかどうか検討する。

証拠(甲六、七)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

1  原告は、建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)三〇条に基づく規約(以下「本件規約」という。)の一〇条三項に基づいて、本件建物の敷地及び本件建物の共用部分を維持管理することを目的として組織され、本件建物の区分所有者全員がこれに加入している。

2  原告には、X管理組合規定(以下「本件規定」という。)があり、それによると、組合員の資格は、区分所有建物の所有又は占有によりこれを取得し、所有又は占有を失うことにより喪失する旨を定めているから、構成員の変更に拘らず原告は存続し、組合員による集会で役員たる理事及び監事を選任し、理事は代表権を有する理事長を互選するほか理事会を構成して業務執行について決定し、監事は原告の財産状況及び業務執行を監査することとされており、現に、平成六年四月に原告代表者が理事長に選任されている。

以上によれば、原告は、社団としての実質を有し、代表者の定めもあるから、いわゆる権利能力なき社団に当たり、民事訴訟法四六条の要件を具備するものというべきである。

二  次に、原告は、法二六条四項により、本件について原告適格を有する旨主張する。しかし、同条同項は、同法による管理者に対して、供用部分等の管理に関し、区分所有者及び相手方の便宜のために、通常なら許されない第三者による訴訟担当を特別に許容したものであるから、同条同項が適用されるためには、第一に、訴訟の目的物が管理者の職務に関するものでなければならず、第二に、訴訟担当者は、同法の管理者に限られるものといわなければならない。

これを本件についてみるに、原告の主張は、被告らの行為により、本件建物の共用部分にひび割れ等の瑕疵が生じたことによる損害の賠償を求めるというにあるから、その請求権は本件建物の共用部分の共有者である各区分所有者(法一一条一項本文、本件規約三条)に帰属するのであり、しかも、可分債権であるから、各区分所有者にその共有持分割合(法一四条、本件規約三条)に従って分割して帰属しているのである。してみると、本件請求が、管理者の職務である共用部分の保存に関するものでないことは明らかである(仮に、各区分所有者間で、取得した損害賠償金を共用部分の補修費用に充てる合意がなされたとしても、右結論を左右することにはならない。)。

また、法二六条四項の管理者の権能を、原告が行使することは許されない。すなわち、本件訴訟について仮に本案判決がされた場合の既判力は、原告に対して生ずるのであって、個々の区分所有者に及ぶものではないところ、法二六条四項により管理者が訴訟担当した場合の既判力は、個々の区分所有者に直接及ぶものであるから、本件訴訟を法二六条四項に基づく訴訟と同視することはできない(本件規約四条は、原告の代表者である理事長は法で定める管理者となる旨規定するが、この規定があっても、右の理は異ならない。)

そうすると、右のいずれの観点からしても、原告が本件訴訟について当事者適格を有するものと解することはできない(なお、原告は本件損害賠償請求権は、原告の全組合員に総有的に帰属する旨主張するが、その失当であることは、前説示のとおりである。)。

第四  よって、本件訴えは訴訟要件を欠いているから、これを却下することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森脇勝 裁判官 脇博人 裁判官 池田順一)

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